第15回【種牡馬分析】2021年産駒デビュー新種牡馬について①

2021年初投稿になります。

今回は、2021年に産駒がデビューする新種牡馬について、血統やクラブ馬の仕上がりなどからレビューしたいと思います。

新種牡馬は多くいますが、産駒数が多くPOGに関係性が大きい、キタサンブラック、ドレフォン、イスラボニータ、シルバーステート、サトノアラジンに絞ってレビューしたいと思います。

機会があれば②レビューもやりたいと思います。

①キタサンブラック

年度 種付頭数 種付料
2018年 130頭 500万円
2019年 110頭 400万円
2020年 92頭 400万円
2021年 300万円

この中で実績No. 1はキタサンブラックです。父はディープインパクトの兄ブラックタイドで、母父は短距離馬のサクラバクシンオーですが、主なGⅠ勝ちが2400m以上と長距離で実績がありました。

産駒を見ても、母馬に短距離馬をもってきている馬は少なく、生産者の狙いとしても中長距離を意識して配合していると思われます。

種付料は500万円と実績から考えると若干安いですが、やはり父ブラックタイドがネックになっていて、キタサンブラック以外にGⅠ勝ち馬が出ていないことも影響してか初年度種付数も130頭と少なく、その後の産駒数も伸び悩み、まだ産駒デビュー前ですが、翌年には400万円に、今年は300万円に減額されています。セールでも価格が伸び悩んでいますので、減額も致し方ないかなと思います。

産駒を見ると、キタサンブラック似の好馬体の馬が多く、クラブの募集でも軒並み人気をしていました。また、これまでディープインパクトに種付けされていて体質が弱かったり、馬体重が少なかったりした母馬に多く種付けされていて、馬格もある産駒が産まれています。

ただ、クラブ馬の近況を見ると、仕上がりはそこまで早くない印象です。ブラックタイド自身も3歳春から頭角を現してきた馬で、父ブラックタイドの産駒も2歳重賞勝ちはタガノエスプレッソ・テイエムイナズマの2勝のみなので、本格化は3歳以降だと思われます。

また、スピード血統を持っているとはいえ、自身が長距離で実績があったため、スピード不足が懸念されます。特に最近は、2歳からマイルを走れる産駒が重宝されているので、その点に対応できるかも重要となりますが、産駒の馬体は総じて胴や脚が長く、あまりスピードがある感じがしません。

個人的には、クラブ馬では馬体から人気をしていましたが、セールでは伸び悩んでおり、産駒デビュー前に半額近くまで種付料を減額していることからも、厳しい結果になりそうではと予測しています。

産駒では、シルク募集の「ポーレン2019」に期待しています。母系にDanzig、Alydar、Haloなど、スピード・機動力を強化する血統が多くあり、5月と遅生まれでPOG期間に結果は出ないかもしれませんが、キタサンブラックには好相性で走ってくると見ています。

②ドレフォン

年度 種付数 種付料
2018年 207頭 300万円
2019年 204頭 300万円
2020年 186頭 300万円
2021年 300万円

ドレフォンは、ダート6F・7Fが主戦場だった馬で、スタートダッシュが良く、軽快なスピードを武器にしていたストームキャット系の馬でした。血統にサンデーサイレンスを持たず、Mr.Prospectorも薄いなど、日本のほとんどの種牡馬に種付けできるのが強みです。種付料が300万円とノーザンファーム種牡馬の中でも控え目なのも人気の理由でしょう。

また、血統にはストームキャットだけでなく、Alydar、Deputy Minister、In Realityなど日本で相性のいい血統も持っているため、様々な配合で成功が期待できる種牡馬だと思います。

ただ、外国種牡馬だからか、ダート馬だったからか、クラブではそこまで人気をしていませんでした。セールでは高値で売れていましたし、種付数も順調に伸びていますから、そこはキタサンブラックの真逆ですね。人気の割に種付料が据え置きなのも受胎率が6割とやや低めなのも影響しているかなと思います。ノーザンファームの馬にも多く種付けしているので、ノーザンも期待している種牡馬だと思います。

産駒は、総じて首さしが太く、胴や脚が短い短距離型の馬の馬体をしています。クラブ馬の近況を見ると、そこまで仕上がり早の感じはしませんが、血統や馬体的にも産駒は2歳から走ってくると考えられます。

産駒の血統を見ると、明らかにディープインパクト産駒に多く種付けしています。これは、ディープインパクト産駒につけると、5代血統表にストームキャット、In Reality、Mr.Prospector、ディープインパクトと、コントレイルの血統を逆にした血統になり(種付けはコントレイルが走る前ですが)、ディープインパクトとストームキャットの好相性から多く種付けされています。産駒の血統を見ても、ダートより芝を意識した配合が多いですね。

厳密にはコントレイルと同じとまでは言えないので、ディープインパクト産駒+Buck passerや、ストームキャットと相性のいいNureyev持ちの馬が狙い目だと見ています。

期待の産駒は、サンデーサラブレッドクラブの「インナーアージ2019」です。母父ディープインパクトでNureyev持ちがいいと思いました。インナーアージはミッキークイーンの姉で、まだ目立った産駒実績がありませんが、ここらへんで一発ないかと期待しています。

POG指名としては、今の段階で産駒を指名候補には入れていませんが、今後の産駒の成長に期待をしている種牡馬です。

③イスラボニータ

年度 種付頭数 種付料
2018年 170頭 150万
2019年 142頭 150万
2020年 122頭 150万
2021年 150万

イスラボニータのGⅠ勝利は皐月賞の1勝ですが、重賞を6勝しました。また、2歳から6歳まで活躍し重賞を勝つだけでなく、距離も1400mから2000mで重賞勝ちするなど、オールラウンドな馬でした。

種牡馬としても、毎年100頭以上に種付けしており、人気の種牡馬でで、フジキセキの後継種牡馬として期待されています。

同じフジキセキ系の種牡馬で、母系にノーザンダンサーが薄いキンシャサノキセキ産駒も、2歳から活躍しており、イスラボニータ自身も2歳の早期から活躍したことから、早期の活躍が期待できるPOG的にも注目の種牡馬です。

ダノンシャンティが種牡馬としてイマイチだったので、心配する向きもありますが、ダノンシャンティは繁殖牝馬の質や3×3の濃いHaloのクロスと気性が大きく影響したと考えられます。種付数や血統・現役時代の成績などからも、ダノンシャンティはおろかキンシャサノキセキを超えることも十分考えられます。

産駒を見ても、総じて仕上がりが早く、父に似た丈夫な馬が多い印象で、クラブでも人気をしており、セールでもいい金額で売れていました。また、馬体も父に似た産駒が多く、遺伝力が強いと考えられ、イスラボニータの「まるでヒョウのよう」と言われた走りが産駒に遺伝していれば非常に面白く、実際、キャロットクラブの「エクストラペトル2019」を見ると、見た目だけでなく、走りもイスラボニータに非常によく似ています。

期待馬は、先ほど挙げた「エクストラペトル2019」です。血統も今1番勢いのある母父キングカメハメハで、イスラボニータがほとんど持たないノーザンダンサーを母が濃いクロスで持っており、調教も順調に進んでいるなど、注目しています。

今回の新種牡馬の中でも、イスラボニータは1番期待しており、可能性を感じている種牡馬です。

④シルバーステート

年度 産駒数 種付料
2018年 191頭 120万円
2019年 157頭 100万円
2020年 満口 120万円
2021年 満口 150万円

シルバーステートは、重要未勝利ながら、4勝の勝ちっぷりや、藤原調教師・福永騎手の「これまで乗った馬の中で能力は1番」との言葉から、種牡馬入りし、種付料も手頃なことから、毎年150頭以上を種付けする人気種牡馬になっています。

種付料を値上げしても種付頭数が増えていることから、産駒の出来もいいものと推測されます。また、クラブやセールでも人気をしており、ノーザンファームの馬もそこそこ種付けしているので、ノーザンファームも注目していることが伺えます。ただ、ノーザンファームの種付け牝馬の質はそこまで高くない印象ですね。

実際に産駒を見ても、ディープインパクト系にしては、小さすぎず、調教も進んでおり、父シルバーステートも中京デビューしたように仕上がりも早い印象です。

血統は、母父がロベルト系のSilver Hawkで、これまでGⅠ勝ちしたディープインパクト産駒にはいない系統ですが、母父ロベルト系のGⅠ勝ちもディーマジェスティの皐月賞の1勝のみです。ディープインパクト系は、孫の代になると切れ味が鈍る傾向にあり、ロベルト系も切れよりも持続力がある血統なので、産駒もそこまで切れないのではとみています。

心配点としては、やはり体質です。自身も屈腱炎で引退しましたが、母シルバースカヤの産駒は体質の弱い馬が多く、同じように体質が弱かったアグネスタキオンも産駒には体質の弱い馬が多いなど、産駒には母シルバースカヤ産駒の体質の弱さが受け継がれている可能性が高いと考えられます。もっとも、産駒の仕上がりは早い印象なので、厳密には体質が弱いというというよりは、怪我が多いという方が適切かなと思っています。

満口になるなど、特に日高で人気していますが、ロベルト系はアベレージよりも一発系だったというのもありますし、怪我の心配もあり、ちょっと期待値が高すぎるかなとみています。

⑤サトノアラジン

年度 種付頭数 種付料
2018年 118頭 100万円
2019年 90頭 100万円
2020年 95頭 100万円
2021年 100万円

サトノアラジンは、ディープインパクト産駒で、重賞2勝、G1は安田記念の1勝のみと戦績は目立ちませんが、姉ラキシスもGⅠ勝ちしている良血馬で、馬体重が530キロを超える雄大な馬体や、実績以上に高い能力を秘めていた点を評価されて社台スタリオン入りをしました。

実績からすれば社台スタリオン入りは厳しい内容で、既に同じマイル路線のリアルインパクトがスタリオン入りしているにもかかわらず導入し、すぐにリアルインパクトを追い出されていることからも、サトノアラジンに対するノーザンファームの期待が大きいことが伺えます。

血統をみても、母父はストームキャットとキズナが成功している配合です。母系には、ミスプロもあり、仕上がりは早そうですし、Nijinskyもあるなど、スタミナも完備しており、自身が得意としたマイルだけでなくクラシック路線でも期待ができます。

産駒数はそこまで多くありませんが、セールでも高評価で、クラブ馬をみても形が良く、馬体重も十分な馬が多い印象です。産駒デビュー後にさらに評価が上がるのではとみています。

期待馬は、ライオンサラブレッドクラブの「ベットーレ2019」ですね。セレクトセール出身馬で馬体も非常によく見えます。仕上がりはそこまで早くなさそうですが、走ってきそうです。